「うたよみん」の機能縮小がアナウンスされてから、穴が開いたようにユーザーが減ってゆくのを感じます。もう今年いっぱい持つのかどうかも怪しいのかもしれません。
すべての人が短歌というものを見括っていたひとつの報いのような気がしています。
多くの歌を作ることは良いことだと思います。しかし、作ること、読むことではなくて投稿することに大部分の人が酔ってしまった結果が、サイトの成長を妨げたのだと思います。
無限の「自己顕示欲」が無限だと思われた「投稿サイト」に放たれた結果、消滅の危機に瀕しているのです。短歌に限らず、自分勝手な行動はいつか神様の怒りを買うことになるのでしょう。つながりなど求めてはいないと、まるで短歌の神様の怒りのようにフォローやコメントが失われてしまうのです。最後には投稿した歌でさえも消滅するのでしょう。
「遊びは終わり」長い梅雨空の雷が、私にはそう聞こえました。
・ 君ならば遠くへ飛べるまだ空も知らない僕を待つことはない
・ 拡げたらどう動くかも楽しみで飛び出す絵本が歌のお手本
・ 豆腐はストンと真四角で沢庵は繋がっていないヤル気の朝餉
・ 一粒を丁寧につまみ詰められた白米故に一つ残さず
・ 置くという切り方がある電波には乗りたがらない想いもあって
・ 純粋は凍土のように手のひらのおはじきの中 永遠を見る
・ 真っ直ぐに立って居られるこの場所も先人が踏み固めた道だ
・ 浪曲のレコード盤は分厚くて重くて難儀「幸枝若」なる
・ 働きを主張するものしないもの白物でさえ多様化の中
・ 主なきハンガーを掛けロッカーの扉を閉めるご苦労様と
・ 嬰児の笑みが癒やしとなるならば君は怒りを何に置換す
・ 無観客それは春にも同じこと歓声のないラストスパート
・ 経典も思想も超えて棘となるそれが短歌に科せられたこと
・ 割り箸はささくれていて端材でもそこに命があったと告げる
・ 遊ばれることを嫌がりそっぽ向く人も言葉も高み目指せば
・ ふるさとはカメラの向こう絶景は扶養普及と別居を責める
・ 肩に手を置けば返事は変わったか もう巻けないというオルゴール
・ 座して聞く乱れる音をお守りは体(たい)と数える寝かせずに持つ
・ 観覧車 メリーゴーラウンド コースター 人は輪廻が好きないきもの
・ 想い出のポケットの穴繕って繕って繕ってまだ零れたる
・ 何者も潤せはしない繰り返し泥の器に水を貯めても
・ 行く春を振り返らずに風を巻き鯉向く先にもう夏はあり
・ 「忘れもの」「忘れられたもの」無実だな傘は忘れた人の持ち物
・ 知らずいて張られ朽ちたる蜘蛛の巣が流れるかたち夏へのかたち
・ 「ごめんね」の文字で縛るよ石となり沈んでゆこう君のインクに
・ 幼き日まぶたを空に閉じ上げた鳥の骸を西日が覆う
・ たちまちに足跡を消す初夏の陽は前だけを見て歩を進めよと
・ 落書きも愚痴や期待も怒りさえ向くのだ君へ抑えきれずに
・ 悲母という名に抗って観音は久子を抱く時に朽ちせず
・ 抱きかかえさすり愛しむ母親のすべてを造る円運動が
・ 十九で母になる君 青春はせき止められたマグマとなれり
・ 鮮明な怖い顔とはうらはらに優しい顔の母はおぼろげ
・ 弟がいたのだという 貧しさを憎んで母は頭を垂れる
・ 遠くなる それもそうだね宇宙なら膨らんでいる母子の距離も
・ 真実はいつも追っ手を遠ざける猜疑という名の追いつけぬ罠
・ 愚かさの実を食べたならもう花の優雅になれぬ線を越えたら
・ 斑紋はせめぐ進化の表れでホルスタインの地の色は黒
・ 漲った感触はない弁当のほうれん草は期待の色だ
・ 翼なら病を超えてゆくだろう命の欠片を強く吹き込む
・ ヌルヌルとまるで奈落の田に立てば苗増すたびに風は濃くなり
2020年7月30日
短歌 ミルク