時節柄、年末が近づくと話題に上がりやすいカレンダーを題材にしてみたいと思います。
時計と同じく時の流れを象徴するものですから、カレンダーからはいろいろと想像が膨らみます。速さや遅さ、一日ごとの積み重ねなど気持ちや感覚に寄り添うような表現が合いそうですが、破られて忘れられることも反対側にはあり、何か消耗してゆくものとか、すり減ってゆくものにも例えられるでしょうか。
私がカレンダーと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、なかなか綺麗に破ることができずに、いつも左上の角に前のカレンダーの端くれが残っていることでしょうか。
今年のカレンダーにはまだ平成の文字がかろうじて残っているものもあります。かろうじてと言うか、今年の三分の一は平成だったということが不思議に思えます。
今回も思いついたことを書きだしてみます。
・三分の一は平成のカレンダー
・綺麗に破れないカレンダー(残したものがある or うまく破れない理由がある)
・12月はいつも破られないままだ。(取り残されたような感覚)
・破られないのにミシン目は入っている。(作っても使われないものもある)
・祭日が憶えられない。(移り変わりの早いこと)
・先送る問いへのあがき破れずに月日が刻む暦も師走
12月を残して破られたカレンダーというのはわかるのですが、上手く破れずに端が残っていることが今ひとつ伝わりません。やはり直接的に言ったほうが良いかもしれません。
切れ端、角、隅っこ、残ったもの、このあたりをどう表現するか、そして、何とか平成を入れられないかと思い始めました。失われた三十年に例えられる平成を歌の中に留めることができないか、・・・・・・難しくなってきました。
カレンダーの角で破れずに残っているものは一体何なのか、まずこれをはっきりさせようと思い考えました。
それこそが、(平成の後悔)なのではないかと気付きました。時間の流れに抗えず、うまく破れずしがみついている姿は、まさにやり残した後悔に例えられます。
切れ端の残った暦、平成の後悔、そして感じたこと、これらを組み立ててゆきます。
(時間を刻む)と(刻む平成)をオーバーラップさせて、(暦が刻む平成)としたいと思います。これが二句三句と考えると初句は切れ端を持ってこなくてはなりません。字数を考えて、(切れ残る)としました。ちょっと舌触りが悪いですが、切れて失われたものと残ったものが表現できる数少ない言葉です。
後は後半ですが、これには感慨をあてたいと思います。少し好き嫌いは分かれますが、今回は徹底的にオーバーラップの手法で作りたいと思いました。
切れているようで繋がっている言葉として、次から次へと何度も読ませて畳みかけていくという作り方です。今回は結構これに当てはまりそうです。
独立した8つの意味の単語をつなげて一つの歌に構成します。
(切れ残る)(残る暦)(暦が刻む)(刻む平成)(平成の後悔)(後悔わずか)(わずか片隅)(片隅にあり)
なんとか意味が破綻せずに繋がりました。(まぐれです)
しかしいつものように詠いたいことは少し曖昧になった気がしています。反省。
● 切れ残る暦が刻む平成の後悔わずか片隅にあり
失われたものはあまりに大きく、平成のしがみつく理由もよく解る。
2019年12月4日
短歌 ミルク