忍者ブログ

短歌のリズムで

言の葉が群れをなすかな鰯雲 暮れゆく空で歌になるらむ

作歌ドリル 6(青春)その1

少し間が空いたので、また作歌ドリルにお付き合いいただきたいと思います。
今回は大きな大きな永遠のテーマ「青春」でいきたいと思いますが、あまりにも範疇の広い事柄ということもありますので、何度もチャレンジしなければならないことは覚悟しています。

つい先頃、うたよみんにて投稿した物に

青春はきっと魔法で君の手を離れたものはすべて宝石

という歌があります。これは以前に作った、

この恋は君と違って上書きはできないだろうあの春のまま

という歌と対で作ったものですが、笑いが出るほどベタで幼稚で、まるで中二病の渦中にあるかのような歌になっています。第一印象は、そこそこ人生経験のあるような大人が一生懸命頭をひねって作るような歌ではまるでありません。かといっていかにも若いと思われる作者から、このような歌が出てくることはあまりありません。どうも、渦中にいる人に見えている青春と、時代や年月を経て見えてくる青春は、同じ景色ではないような気がします。ともすれば恋心と混同しかき混ぜてしまうことの多い青春は、賞味期限のあるものと、賞味期限のないものが存在するように感じています。

まず初めは一般的な、賞味期限のある青春について、作歌を進めていくことにいたします。

ストックしてあった歌に丁度よい題材がありました。

・鏡なら見れば見るほど許せずに今日も前髪は反抗期

どなたにもご経験があると思います。思春期の洗面台でにらめっこする様子を詠ったものです。ふらふらっと深く考えずに作ったのでしょう、私の歌に多い、スローガンチックで絵に描いたような素人の作り方です。

「鏡なら・・」これは最初からいけません。
「鏡ならば」には許せる対になる対象が必要ですが、この場合は「イケてる自分」というところでしょうか。仮にイケていたとしても、自分で許すなんてちょっと滑稽かもしれませんし、更に「反抗期」というのも、本人自らが使う言葉ではありません。体言止め自体に嫌悪感は抱かないのですが、少し先というか、深くは考えることのない歌であることも気に入らない所です。

鏡には・・別の自分・・なんてフレーズを想像していませんか?
髪が跳ねて・・・とか、決まらず不機嫌・・・とか、そういう思考ではダメです。

歌題を思い出して下さい。
「青春」です。
思春期特有の状態を表す言葉を探してみますが、手っ取り早いのは「卵」などでしょうか。
未熟なことの例えによく使うと思います。ありきたりかもしれませんが、敢えて卵を例えに使って練り直してみましょう。

私は物事や物すべてに意味を見いだすことをクセ付けておりますので、何かと意味付けを行ってから言葉を選択したり組み立てたりして作ります。
卵、殻、黄身と白身、卵殻膜、気室(くぼみ)といった所がよく知られている名称だと思いますので、このあたりを使って考えてみましょう。

鏡を見てあーでもないこーでもないという違和感をどうするか、自分で語るのか、人に語らせるのか、それとも映ったものや姿で表すのか、迷うところです。
よくよく考えて見れば、最も自分を長い時間見ているのは自分であり、鏡であることに気付きます。それならば鏡に語らせましょう。ドッペルゲンガーでもある自分の言葉として気に入らない様子を描くことにいたします。
(鏡から・・・・声がする)で丁度10音なので、中の二句七音を考えます。
よく使われるのは「違う」とか「そうじゃない」という言葉だと思います。音数を合わせるならば、(「違う違う」と)もしくは(「そうじゃないよ」と)になると思いますが、安易にカギ括弧を使うのは好きではないので、(違う)の方を選択したいと思います。
鏡から ちがうちがうと 声がする
漢字とカギ括弧を止めて、ちがうの重なりがいかにも心の声という感じが出るようにしたいと思います。
残りは下の句ですが、ここに卵の例えをブチ込まなくではいけません。(困)
傷つきやすい心を持った年代です。傷と言えば傷の手当てにも使われる卵殻膜、皆さんご存じの薄ーい膜のことです。よく見ると透けています。透けているとは優れた暗示です。
こちらからも、向こうからもぼんやり見えています。
何か、思春期の子供を見る大人からの視線と、まだはっきりとは確認出来ない大人の世界を内側から見る子供の視線になぞらえて見えます。

らんかくまく・・・・これだけで六文字。しかも何か堅い言葉であることが引っかかります。しかし膜のことを詠う以上、卵は絶対外せません。

もう一度、それぞれの位置関係というか、立ち位置を確認してみましょう。

鏡(もうひとりの自分・周りで見ている大人や仲間)
卵(思春期の自分自身)
膜(大人や周りの世界と自分を隔てているもの)

上句で鏡の方向からの声を出させている訳ですから、その方向から見た姿や状態を詠う方が自然かもしれません。ここで気をつけたいのは、卵の見え方だと思っています。

・大人は卵の殻も割ったことがあるので、薄い膜のことも中身のこともすべてお見通し(外側からの視点)
・子供は殻を割ったことがないので、薄い膜もそうだが厚い殻の外側のことも知らない。ただ、内側からでも膜が薄いことは解るので傷つきたくはないし、外見を気に掛ける。(内側からの視点)

子供の気に掛ける外見とは、大人からすれば「見てくれ」のことだと思います。
本当は中身が大切なのだけれど、子供はまだそれを理解できずに薄い膜のことですら気に掛けている。・・・これは先の鏡の方向からの大人の視点と合致します。
「見てくれ」だけでは厚みが解らないので、「薄い見てくれ」とします。薄いみてくれを持つものは卵ですが、「包む」としてやわらかい中身を対象にしたいと思います。

随分飛躍してしまったので上句と下句が繋がらない可能性も十分ありますが、読まない読者の頭の中に投げるクエスチョンとしては最適だと思うのですが、いかがでしょうか。

いつも通りのまとまりの無さですが、最初はこんなものですね。

鏡からちがうちがうと声がする卵を包む薄い見てくれ

君からもその薄さは同じように見えているだろう。だから殻を叩く音にはとても敏感なんだね。

2020年2月28日
短歌 ミルク
PR

コメント

プロフィール

HN:
ミルク
性別:
非公開
趣味:
頭の体操
自己紹介:
気づく人だけが手に入れられる
輝きを求めて、日々の宝探しを
楽しむように短歌のリズムで進む
足あとのようなものです。

カレンダー

12 2025/01 02
S M T W T F S
2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

リンク

にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ
にほんブログ村

当サイト内のすべての絵と文、短歌の転載はご遠慮ください。
無許可の転載、複製、転用等は法律により罰せられます。
All rights reserved.Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
本站內所有图文请勿转载.
未经许可不得转载使用,违者必究.
にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ