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短歌のリズムで

言の葉が群れをなすかな鰯雲 暮れゆく空で歌になるらむ

テコの原理

「・・弾かないもの」という歌に「引っかかる」何かを感じて、より深く読み解こうとして頂けたことは、作歌の際に意図した方向へ読者の意識が流れていることを実感できる経験でした。

「お金のように弾かないもの」

この下句はそのまま直前の「愛情」を指すものだと、普通は読まれると思います。
「お金のように弾かないもの」=「愛情」
そろばん感情をするかのように、愛は測れるものではないといった読解からの解釈ですし、最も単純で解りやすいものだと思います。
しかし、解りやすさを優先すれば、測れないことの例えに「弾かないもの」という表現は些かありきたりに思えます。それでも、弾かないものに敢えてこだわったのは、お金を数える動作や仕草(指の動き)を想起させたかったからに他なりません。

「おはじき」が少し飛躍が必要な発想であることは私自身も少し反省しておりますが、お金を計算する「弾く」とおはじきで遊ぶ「弾く」の動作の違いや目的の違いを奥の方に置いておきたかったので、「お金のように数えないもの」とはせずに「弾かないもの」としました。

「お金」=「有償の役務」
「弾く動作」=「作業」
「動作の様子」=「無意識」
「価値のありか」=「お金そのもの」
「道具としての趣」=「なし」

「おはじき」=「無償の愛情」
「弾く動作」=「望んで行う行為」
「動作の様子」=「意識を伴う」
「価値のありか」=「おはじき遊びの時間」
「道具としての趣」=「あり」

否定して問いかける結句には、このような2つの要素の違いを想定していましたが、こうなるととても一読しただけでは辿りつくことは難しくなります。ただ、辿り着いた人がいても決して破綻しないことと、歌意に大きな差異が生まれないことに気をつけて想定したつもりでおります。

もう少し詳しく解説するならば、こんな感じです。

愛しい人との時間や年月は、まるで美しいおはじきをそっと弾くように、取った取られたもお互いに楽しく幸せな時間です。決して作業の対価を分配するような機械的なものではないのです。お金は時代によって値打ちが変わりますが、おはじきはその姿も価値も何も変わらない。尽きるほど、そして尽くしたとまで言える愛は、結局数えられるような安っぽいものだったのでしょうか。おはじきはたった二つでもそこにあれば、またすぐに遊ぶことができるのに、愚かな人はすぐに数えて尽きる前のお金の量に想いを馳せたがるものなのでしょう。胸の中にあったものは本当に尽くして、尽きてしまったのでしょうか。何かを失って、何も得られなかったのでしょうか。おはじき遊びは人生にとって全くの無駄なことだったのでしょうか。

一読しただけでは意図したことや歌意の一部分しか理解されないことを承知で作っているので、より深い所に意識を向けて読んで頂いた方にだけ、より深く理解が及ぶようにしたつもりです。私は歌をこの手法で作ることがとても多くなりました。

テコの原理に例えるなら、

●支点=歌意
●力点=作歌(歌そのもの)
●作用点=読解による解釈

といったところでしょうか。何度も申し上げますが、私が歌意を譲らない根本は、歌意こそがテコでは最も重要な「支点」になっているからです。支点がかっちり決まっているから、作用点が振られても破綻しないのだと思います。例えるならブランコです。
それに対し、私自身が読んでみてどうも理解に苦しむ歌の多くは、この支点が曖昧に濁されてしまっています。支点が曖昧か、もしくは複数あるのでしょうか。複数あるとすれば、トランポリンのような感じでしょうか。
複数の支点は固定されていますが、最も有効な作用点はただ一点に絞られますし、そもそも力点が外に飛び出てしまう危険性すらあります。ただ翔んで跳ねているときは楽しいのかもしれませんが、それは作者にとっても、歌にとっても幸せなことだとは思えないのです。

軟らかい、軽い歌ももちろんあっても構わない、けれど深く考察できる歌や心をえぐられるような辛辣な歌もなければ、おそらく楽しみは半減すると思います。
どの歌も大河になる可能性を秘めているのですから。

短歌にも支点・力点・作用点それぞれの持つ役割があり

ブランコを意識する。どこにでもあって誰でも遊べる。死んだりしない。

2020年4月25日
短歌 ミルク
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HN:
ミルク
性別:
非公開
趣味:
頭の体操
自己紹介:
気づく人だけが手に入れられる
輝きを求めて、日々の宝探しを
楽しむように短歌のリズムで進む
足あとのようなものです。

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