まだ漢字も満足に読めない頃に、重厚な百科事典の白いページの中に美しい蝶を見た時の衝撃を、その姿は一瞬で思い起こさせる出来事でした。小学生以来の大人になった君を見たとき、全てが再び図鑑の中に引き込まれました。少し話をして、冗談交じりに「当時は好意を持っていた」なんて言うのが精一杯で、あっさりと見送ってしまった、柄にもなく大人を気取る自分を呪ったのも懐かしい記憶です。
美しい紋様だから触れられず君は節度の繭に消えゆく
もう図鑑の中には入れない。手を取れば元に戻せないことを知っているから。
2019年6月20日
短歌 ミルク