真っ暗な砂浜を海に向かって一斉に駆け出して行った子亀が、産卵のために故郷の砂浜に帰ってきます。今は減ってしまった上陸の足跡を、昔は多く砂浜で見かけたものです。数年から数十年を経て、地磁気をたよりに故郷を目指したどり着く、旅立ちの浜辺に亀たちはどんな想いで還ってくるのでしょうか。消失してしまう砂浜もあると聞く現代に、大きくなったヒレでつけた足跡は、大切なメッセージを砂に刻んでいます。
這い出した砂の匂いを確かめる帰郷の痕はまだ浅くあり
スマホを持たない生き物は、地球の呼び声だけが頼りです。
2019年6月12日
短歌 ミルク