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短歌のリズムで

言の葉が群れをなすかな鰯雲 暮れゆく空で歌になるらむ

短歌で気を付けなければならないこと 4

ふと思い立った時に諳(そら)んじられる歌がいくつありますか?
それが一つもないとしたら、それは歌が繰り返し読まれることに耐えられずに自壊したということです。長い時間と繰り返しの荒波に耐えられるのはどのような歌なのか、そのことが問われているのです。

・ 簡単な言葉と平易な表現、素直な詠いを追求する

・ 読み方が複数考えられる場合にはふりがなを振る

・ 流行言葉、覚えたての言葉、極端に難しい専門用語などは使用しない

・ 間違った言葉や漢字、送り仮名、読み方は用いない

・ 三十一音はあくまで基本で、丁寧な言い回しを心がける

・ 字で読んだときと声で読んだときに不自然な部分がないかを考える

これらは、一般的に言われていることと同じです。子供から大人まで、後に覚えて口ずさむことがあるのならば難しい言葉は不要です。かといって歌謡曲の歌詞のようでもダメでしょう。伴奏のない世界で歌は成立しなければなりません。平易に近づけるということは、最も困難で高度なスキルが要求されることですから、これらの事に最も時間を割くべきだと考えています。

初心者はとかく新しい言葉や見慣れない表現に飛びつきます。
投稿サイトや歌会サイトは類似歌に溢れていて、いかにオリジナリティが蔑ろにされているかを物語っています。多用すればするほど言葉は陳腐化を加速させます。そしてそれは作者が最も最初に感じる違和感になるにも関わらずです。

・ 共感に近づいてもダメ、共感を誘き寄せてもダメ

三十一文字の当てはめや言葉遊びに疲れてくると、今度は共感を探し始めます。
SNSに集うのはとにかく承認が欲しい人ばかりなので、投稿してもいいねが押されなければ我慢ができません。何とかして共感を得ようとその手段や同調要素の捜索を始めます。
このことが更に短歌を腐らせて醜くしてしまいます。

安易な共感を求めて、定番になっている食べ物や場所、出来事やフレーズ、何にでも手を出してしまいます。これだけ発信者がいる中で、同じ事が語られていない訳がありません。
またしても類似歌や類似表現の乱発となり、読者も周りもついてはゆけない状況にまで陥ります。圧倒的な既視感、ごく普通の日常やありきたりなものへの異常な感動アピール、自らがどんどんどんどんハードルを低くしても更に周りはついてこれずに脱落してゆくのです。そしてぱったりと歌も詠めなくなります。

ガンという病でさえ二分の一に近い確率で罹患するのです。これでは男女の比率と変わらない。
自分がどんなに特別だと感じたところで、それを共感できる出来事として、いったいどれだけの人が受け入れてくれるのでしょうか。そして仮に受け入れてくれたとして、両者に何が残るのでしょうか。「ふぅーん」「たいへんだったね」の先に心は誘われるのでしょうか。

短歌はつぶやきでも、日記でもありません。ましてや前衛芸術でもありません。
自らが出来事の新たな断面を発見するきっかけにならなければ心には引っかかりません。
自分の考えや経験や出来事が特別であると決して思わないことです。
そして毎日見ている何気ない景色の中にこそ、特別に見えるものが隠されていることに気付ける姿勢を保つことです。

そんな人にこそ、言葉は特別なものとして湧いてくるのだと思いますし、何千回何万回と唱えても決して朽ちない宝物へのヒントを授けてくれるのでしょう。

短歌に関わるすべての人々が、誰かや何かに認めて欲しいという思考から一歩進んで、歌や言葉と真剣に向き合わなければならないと思っています。

2020年5月18日
短歌 ミルク
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コメント

プロフィール

HN:
ミルク
性別:
非公開
趣味:
頭の体操
自己紹介:
気づく人だけが手に入れられる
輝きを求めて、日々の宝探しを
楽しむように短歌のリズムで進む
足あとのようなものです。

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