雨が隠しているもの、明らかにするものを、濡れながら考えた日
1・濡れるまでわからなかったこともある乾けば一つ大人にもなる
2・泥水が映す垣根もパステルで雨に踊るよ紫陽花乙女
3・揺れている線香花火五月雨に恋は終われぬカワラナデシコ
4・天気雨 海と空とを分けるよに夏のゲートは七色で開く
5・大空に向かい心を差し出せば梅雨の晴れ間も澄み渡るなり
6・雨粒に打ち抜かれたい泣けもせず穴も開かない私よ溶けろ
7・ダム底に褪せた校舎を連れて行く地雨が時を沈め始める
8・アスファルト濃く塗り替えてにわか雨リバーシブルの街は夏色
9・過ぎ去った残り香だから愛おしい上がった後から匂う雨とか
10・雨だれが促すリズム紫陽花の独唱 輪唱 合唱となり
11・この梅雨が明けたら空にあっかんベー君がミドリの舌出す季節
12・伸ばす手がとどく近さで曲がり行く路面電車が梅雨晴れをゆく
13・制服が肌に張り付く違和感も青春だった雨の放課後
14・夕立を横切る速さシャツが透け海になったよ君に飛び込む
15・大人しく雨音を聞く空蝉の最期にならん雨音ならば
短歌 ミルク