唯一の得意料理である手作り餃子を食べに来てと誘われるのは、きまって君が誰かにフラれた時ばかり。それは傭兵へのねぎらいのように丁寧に準備されていました。
前線へ送り込む段取りをして君の背中を押したのもつかの間、同僚に背中を撃たれてジ・エンドとは、なかなかの不運ぶり。ほどなく要請された宴はやはりいつもの手作り餃子。連夜彼女を慰めるユーミンの歌が流れる中、丁寧に詰められた白く小さな餃子が並べられるのを僕はただうなずいて見ているだけですが、そこに涙を見ることはありません。
上手いとも下手だとも言わず黙黙と食べて食べて食べ続けて、子犬のようにパンパンになったお腹を見せて笑わせて帰る。そんな傭兵の仕事もこれで3度目ですから、内心は笑えない、せつない戦いです。
dandanのリズムで込める餡を手に半円閉じる小さき叛乱
その正義が窮屈だと言わんばかりに、焼けた餃子は弾けて餡を吐き出した。
2019年8月24日
短歌 ミルク