エアコンのない生活も十年あまり、部屋の温度計は34℃を指したままでピクリとも動きません。こちらの方がピクリとも動かなくなってしまいそうな酷暑の中ですが、短歌に向かう脳を休ませては居られません。頭が回転しない時節だからこそ、自らが刺激の発端になりたいものです。いつまでもどこまでも、ライバルは自分の中にあるということですね。
これらは最近買い物ついでに書き留めたものです。
・ 売り場ではいつも以上にラジカセが幅をきかせてセールストーク
・ 本は皆シュリンクされて本屋から紙の匂いが薄れゆく夏
・ 気のせいか階段使う人が増えエレベーターの鈍る反応
・ ことごとく立ちふさがれてエチケット 見えぬ番人 見られる万人
・ ビジネスの作り笑顔は暴かれて今さら学ぶ心の笑顔
・ 駐車場だけが三密 他人とて心配になる県外ナンバー
コンビニのお弁当がいつの間にか量を減らされ、値段を上げられ、更に容器を上げ底にまでされてしまっていることを、「ステルス値上げ」というらしいです。
世知辛い時代背景に加え、今回のように災禍に見舞われてしまうと、気付かぬうちに不便になっていたり、お得だと思っていたことが実際にはそうでもなかったという事態に多く遭遇することになるでしょう。エチケットのように不便の先に誰かの安全や安心があるならともかく、自分達だけが生き残りたいという野心まで見え透いてしまっては、ただの愚かな行為となってしまいます。
惣菜売り場の奥で熱気の中、揚げ物を丁寧に個包装されている姿、フードコートの一脚一脚を一生懸命に消毒し整列させている姿、売上は落ち、仕事は確実に増えているというジレンマの中で奮闘している人達のおかげで生活が成り立っています。
物質もサービスも心がけも必要十分なミニマムを追求することが突きつけられた時代、最も豊かにしなければならないのはやはり心の中のものということなのでしょうか。
2020年8月21日
短歌 ミルク