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短歌のリズムで

言の葉が群れをなすかな鰯雲 暮れゆく空で歌になるらむ

心の鎖国をどう解くか

人の欲望は一旦その方向に優位性を見いだしてしまうと、頑なにそれを保持しようとするものです。閉鎖的な国は閉じられたものばかりを珍重する国になってしまいますし、逆に開放的な国では解き放たれたものにこそ価値を見いだす方向に、国や国民全体が動いてしまいます。

二十一世紀になって尚、日本という国は未だ鎖国の中にあるといえるでしょう。
開かれているように見えている物はまやかしのように儚く、本質を問えば問うほど醜い利己主義が垣間見え、愚かだと言わざるを得ません。

自分の国が一番、自分の県が一番、自分の町が一番、自分の町内会が一番、自分の家が一番、自分の家族が一番、そして自分が何より一番という、まるで巨石のように居座った価値観が蔓延る社会は、結局のところ精神的な鎖国に等しい行動にしか結びつきません。

当たり障りのない傍観者でありながら、極端な成功や失敗や堕落を夢見て落差に一喜一憂する人ばかりで、歌人ですら何かの宗教に飼い慣らされた豚にしか見えなくなってきました。だからといってひっきりなしにデモをしろとか、シュプレヒコールの声を上げろと言っているのではありません。あまりにも平和呆けし過ぎてしまって、世の中の事が全く見えなくなってしまっていることを嘆いているのです。

塔和子さんを始め多くのハンセン病患者を苦しめている「らい予防法」は、1996(平成8年)年3月にようやく廃止されました。二十一世紀に間もなくなろうかとする時代まで、(自分には関係ない)という無責任な多くの国民のせいで放置されたままだったのです。

流行言葉のように「多様」とか「共存」とかを口先だけで語る人達の陰で、自らの選択によらず被差別対象となってしまった人達は苦しみ続けています。表で綺麗事を唱えても、日本という国は差別や区別をすることが心根に染みついた、愚かな風習や慣習を多く抱えています。遙か昔から既得権益を手放さない為に、あらゆる汚い手段を用いてそれを守り続けてきたのです。
自分達の権利を守るために必要な法律や条令だけが次々と発せられ、社会の闇に埋もれた真の弱者の姿など見るつもりもありません。裁判官ですら前例主義にまみれ、罪を公正に裁くことができなくなってしまっています。続くこと、続けることに重きを置いたまま、時代の価値観に合わなくなってしまった仕組みのなんと多いことか、日本人はその過剰とも言える細かさが生んだ制約に、自らが囚われ、溺れてしまったと言えるでしょう。

今までの価値観を吹き飛ばす、そんな嵐が待たれています。

政治にも、社会にも、学校にも、そして歌壇にも、真似して良いことなど何一つ残らなくなってきた時代に、機械的ではない、人の叡智が導いた判断ができる新しい人材が一人でも多く活躍することを期待せずには居られません。伝統などという言葉に惑わされず、安易にその雰囲気の奴隷にならず、明確な意思をもって素早く決断する一人一人になりたいものです。

短歌も俳句も「日本語だけの世界だから」とあぐらをかいていると、歌碑でさえ墓石のようにいつか処分されるかもしれません。残すべき物は時代が決めるのであって、愚かな人が決めるのではないことを、心に留めて置かなければならないでしょう。


・ 制約を作り溺れて自滅する心の鎖国は未だ解かれず

外側を覗く勇気、内側を眺め戒める覚悟、鎖が錆びて朽ちるのを待つ人なのか、自ら岩に打ちつけて断ち切る人なのか、平和とはただ傍観者の元に落ちてくる餅ではないことを八月は問う。

2021年7月26日
短歌 ミルク
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HN:
ミルク
性別:
非公開
趣味:
頭の体操
自己紹介:
気づく人だけが手に入れられる
輝きを求めて、日々の宝探しを
楽しむように短歌のリズムで進む
足あとのようなものです。

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