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短歌のリズムで

言の葉が群れをなすかな鰯雲 暮れゆく空で歌になるらむ

朽ちてゆくもの

工業製品や日用品の中にはポリウレタンのような化合物が多く使われていて、例えば靴底やカメラのグリップなどがベタベタになってしまったりバラバラに崩れてしまったりということがよくあります。加水分解という変化を起こしてしまった状態だそうです。中には大切に長い間使うであろうと思われる製品も、この加水分解のおかげで思わぬ短命に終わってしまうという残念な物もあり、設計や素材の選択はとても大切なことだと、そんな製品に出会う度にとても勉強になるものです。

プロの歌人でも多くが「雰囲気」に飲み込まれて固有名詞や流行言葉を使っています。
作って、披露して、そして時間が経つとどうなるか、もうその言葉自体が死語のように受け付けられない謎の言葉になってしまっていると嘆いているのです。
自分の身の周りにこびり付いた物事や自分だけの世界を詠ってしまうと、結構な確率で爆死する言葉を安易に選択してしまいがちなのでしょう。
先にも書いた「水仙と盗聴・・・」の例でも明かですが、水仙の横向きの花弁が話をこっそり聞いているかのように見えたとしても、安易に「盗聴」を持ってきてしまうと「作りました感」が倍増してしまうのに、表現の落差が欲しいために止められないのです。

定番の食品でさえもパッケージや素材、味まで日に日に変化しているにも関わらず、ただ自分が見た、触れた、感じた、味わったというだけで自分のノスタルジックな想い出のように語ってしまうことは余りにも安直で軽薄です。

これだけ言ってもまだ解っていない人がたくさんいることが不思議でなりませんが、
「自分の身の周りの事を詠うな」ということではありません。
「自分だけの身の周りの事を詠うな」ということなのです。
安易に固有名詞や商品名を使ってしまうと、往々にして自分だけの事になりがちですし、極めてローカルな話題やニュースも他人には全く想像ができません。

自分だけの出来事がまるでオリジナリティとでも言いたげで、可笑しいくらいに薄っぺらいものです。そんなものはオリジナリティでも何でもない、日記に毛が生えた程度のお話です。今を記すことは大切なことだと思いますし、今の時代にしか生まれなかった言葉もたくさんあるでしょう。しかし短歌や俳句に使われる言葉は、その時代の背景や空気感を背負えて初めて生き残れるものだと思います。
「まるで死語」のような扱いを受けてしまうということは、詮索する意欲も興味も生まないただの流行言葉だということになります。

ただ一番残念なのは劣化した歌や言葉ではなく、そんな言葉しか選択できなかった作者の心が一番朽ち果ててしまっていることでしょう。時間は辛辣さを一瞬たりとも緩めたりはしません。固有名詞や商標もそのものが背負っている時代の空気感を含めて使わなければ、やはり一過性の熱のようにあっという間に冷めてしまうことを頭の隅に置いておかなければならないでしょう。

普通から生まれぬ落差衝撃を映える言葉で着飾ってみる(愚かなこと)

経験や体験が無いからといって想像の産物で埋めてはダメ。想像力の産物になるように考えることが短歌のスキル。

2021年4月17日
短歌 ミルク
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プロフィール

HN:
ミルク
性別:
非公開
趣味:
頭の体操
自己紹介:
気づく人だけが手に入れられる
輝きを求めて、日々の宝探しを
楽しむように短歌のリズムで進む
足あとのようなものです。

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