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短歌のリズムで

言の葉が群れをなすかな鰯雲 暮れゆく空で歌になるらむ

大きな分母

猿でも嫌悪学習した食べ物は二度と口にしないのに、人という生き物は命が左右されるリスクを眼前にしても、自粛など何処吹く風で「自分だけは」「自分達だけは」という間違った「許容範囲」を信じて止みません。
確かに大都会では分母が大きいものに囲まれているために、あらゆるものごとが「何とか間に合う」という状況が作り出されていますが、それは逆に間に合わなくなったら、堰を切ったようにリスクの嵐が訪れるということの裏返しに他なりません。

まるで考えなくなってしまった現代人は、やたらとこの「大きな分母」にもたれかかって生きているように感じます。時間の感覚についても「長い歴史」というものには疑いの欠片ももたずに受け入れています。「創業何百年」が大切な事ではないはずなのに、無条件に「良いものを作っている、売っている」と思い込んでいます。大企業だから終身雇用が守られるはずだとか、警察官や消防士だから悪いことはしないという、まるで子供のような考え方と同じです。無茶な戦争で国があれだけ木っ端微塵になったにも関わらず、未だお国の進む方向は間違っていないと言い張るのでしょうか。

オリンピックの開会式を見て、つくづく東京という都市は何でもある夢のような街をとり繕った、中身はスッカラカンな場所だと納得させられました。奇しくもデザインされた無観客の客席が表現した「居るように見える」という状況にシンクロした空虚さだけが心に残りました。

圧倒的な戦力と報じられていた軍の実際は、訓練もままならない未経験の平民の集まりで成り立っていました。それでも足りずに次々と招集し、人だけではなく終いには金属まで足りなくなり集め出す始末。分母の大きさを神がかり的に吹聴した為に、自力で立ってはいられないほど分母が痩せていることを自認しないまま突っ走っていったのだと思います。
大きな分母側に立ってみれば、小さな個々の分子は虫けら同然だと思うでしょう。同様に小さな分子側から見てみれば、大きな分母は何よりの安心平穏の拠り所であったに違いありません。
実体や外の世界の実状を知らずに自分を「制する」ことから逃げ回ってきた日本を粉々にしたのは、発展の礎である現代科学と自然災害であることは、とても皮肉なことだと思いますが、一握りの愚かな集団は「奢り」という悪魔の呪いにかかっていたことすら解っていなかったのでしょう。
「自分たちが国を動かしている」それは愚かな遠吠えにすぎません。

散っていった高潔な魂は、果たして今の日本に帰りたいと思うのでしょうか。
余りにも箍の外れた人々を見て、それでもいいと納得してくれるのでしょうか。

「平和」とは刃を研ぐことに近いことだと思うのです。
何かを殺めるために研ぐのではなく、自分を「制する」ために研ぎ続けることが、平和をもたらす原動力になるのだと思います。

「古き良き」、果たして本当に古いものは良いものばかりなのでしょうか。
「悪しき」ものは一つもないのでしょうか。
理由も無く、ただ続いているものを今こそ激しい流れに晒して濯がねばならないでしょう。

真っ当で正直で、同調に屈しない本物の価値を見いださなければ、残すべきものを失うことになりかねません。繋がれなかった命が繋げようとしている想いを知って、「制する」ことの大切さを学ばねばならないのです。

もう「古き良き」や「大きな分母」に甘えるのは止めにしませんか。
正しい判断ができる未来をもたらすために。

八月の陽炎を割くまっすぐに延びた視線が碑銘をえぐる

誰一人殺し合う未来など望んでいなかったのに、誰一人残らない現実を呼び寄せてしまう。
百年をかけても石ころにすらなれない傲慢を切り裂くように立秋の陽が射す

2021年8月15日
短歌 ミルク
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プロフィール

HN:
ミルク
性別:
非公開
趣味:
頭の体操
自己紹介:
気づく人だけが手に入れられる
輝きを求めて、日々の宝探しを
楽しむように短歌のリズムで進む
足あとのようなものです。

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