・ 閃きの炎を燃やす湿りつつ役目を果たすマッチ棒クイズ
・ しっとりと焼けます!とありドタキャンをされた私に欲しいオプション
・ 冬になり優劣のあることを知る電線も賑わいたわみ鳥がひしめく
・ 張られたり 消え入りそうな明星を掬うゆりかご 繊になぞらえ
・ 始まりと終わりは平ら止められたエスカレーターに生き様を見る
・ カラカラと弄ぶ音 残された一つと一人 響く空き缶
・ 雰囲気はとても似ていてそれはもう雰囲気だけは似ていてはダメ
・ ドヤ顔で新車の奴の脱輪を救った僕のリターンエース
・ 両端にアールたたえた一文字そこはエースの駆け抜ける場所
・ トキメキは意識前線 気になると気にならないを行ったり来たり
・ 一つだけ君が解き忘れた魔法トイレ掃除は今も楽しい
・ 秋からの時は止まっているようでスノードームの雪は水底
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2020年02月03日
短歌 ミルク